ドラッグ統制の始まりについて④(アメリカ)
皆様こんばんは。9月も残す所あと1日ですね。
季節の変わり目お身体ご自愛ください。
前回のドラッグ統制の始まりについて、アメリカでのアヘンやコカインについて触れました。
本日はマリファナについてみていきます。
マリファナは大麻という植物ですが、幻覚作用をもたらすため日本でも大麻取締法(1948年)よって使用や売買は禁止されています。
ですが、法律で規制しても裏でのルートがありますので、完全に使用をなくす事は現在では不可能です。
アメリカでは大麻課税法(1937年)が制定され流通や使用に課税していました。この法律の制定に際して、連邦麻薬局による各州政府との連携や利害関係集団との利害調整が重要であった事が指摘されており、マスメディアを用いた宣伝活動が重要な要素であったと言われています。
1911年にアヘンやコカインの輸入禁止の公聴会の際にマリファナについても危険性が指摘されていましたが禁止はされていませんでした。
そして医薬品として扱われていたマリファナですが、1906年にその成分が入ったものには含有量の表示を行うよう規制されます。
ですが、1914年にアヘンを禁止したハリソン法ではマリファナについては問題視されませんでした。
しかし1920年代になりアメリカの南西部や西部中心に問題視されるようになり、アヘンと似たような解釈へと変わっていきます。
この時のマリファナ使用の特徴は、メキシコ人移住者の使用から始まったという事です。
アヘン使用では工業を中心とした中国人移民への差別から、アヘン喫煙が犯罪へと移り変わっていきますが、メキシコ人移住者は主に農業労働に従事していました。
彼らがマリファナ喫煙をする事で犯罪が増加していくという見方変わっていきます。
1930年代になると、使用が顕著であったニューオーリンズ医学論文に文明的な抑制を失わせる性的な刺激剤であると論じられています。
ですが、丁度この時期は1929年の大恐慌があり、メキシコ人移住者の流入の増加に伴い、メキシコ人労働者自体が問題視されていた事に関連づけられたという見方も出来ます。
1931年には警察科学の論文にマリファナが犯罪の原因であると論じられ、裏社会での犯罪がマリファナ使用によるものではないかと予測されました。(検察官による)
ここで、今までのドラッグ問題性を概観してみると、アメリカの場合では外部からもたらされた「移民」問題に過剰に反応した司法の情緒的な反応であるという事です。
ドラッグそのものでは問題視する事が出来なかったが、白人達が中国人移民仕事を奪われたという嫉妬や、白人女性と中国人移民の性的な関わりなど、自らの国の秩序が外部から乱された事を契機に、まるで自国の資源が剥奪されたかのように反応したアメリカが、先導して行って行った事がドラッグ統制であるという事です。
(マイノリティの排除)
いつの時代もそうですが、差別や偏見というなるべく抑えておきたい感情をいかに正論で司法という強制力を用いて排除するかという構図では、結局司法で取り締まるだけで犯罪者を作り出すだけですので、当初の問題であった麻薬の使用の廃絶は困難であったという事が今日理解する事が出来ると思います。
ここまでアヘン戦争から世界全体のドラッグ統制への参加や反応、アメリカ国内での統制の詳細について概観してみました。
次回は日本と覚醒剤についてお伝えしていきます。
参考文献:佐藤哲彦著「ドラッグの社会史」世界思想者2008年
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