摂食障害の概念と歴史について
皆様こんばんは。
本日は少し暖かかったですが、夜は冷えますね。
お身体大切になさってください。
摂食障害とは何かと聞くと、「きちんと食べられなくなる病気でしょ」というお考えの方が多くいらっしゃると思います。
ですが、この摂食障害という概念は1980年に米国精神医学会が作成したDSM-III(精神疾患の世界的な共通言語による定義や解釈)で初めて疾患に分類されました。
anorexia nervous(拒食)略してANの概念の原型となる状態には様々な歴史が存在しておりますので、本日はそれらについてご説明させて頂きます。
まず、拒食と過食について大まか分類すると
anorexia nervosa(AN)には、
・神経性食思不振症
・神経性食欲不振症
・神経性無食欲症
・拒食症
・思春期やせ症
があります。
bulimia nervosa(BN)には
・神経性過食症
・神経性大食症
・過食症
・大食症
があり、それぞれ症状が違います。(後にお伝えしていきます)
ですが、DNM-IIIでこれらが分類される以前から、沢山食べて体重が増加する方や食べなくなって痩せていく方は沢山いました。(アヘンの依存性という概念が存在していなかった事と同様に、あるきっかけからある行為が問題視される事で現代の精神疾患が作り出されていったという捉え方も出来ます)
ANの本質は、摂食と体重に対する異常な態度や行動で、患者は体重減少や摂食量の低下を心配せず、むしろこれらを望み更に痩せる事で達成感を得ている状態です。
こう言った行動は昔からそれぞれの社会文化と密接に結びついていました。
①聖女の断食
古代西洋文化においては、断食はあらゆる宗教儀式の一部をなしていました。
この目的は、禁欲や修行一つであったり、人の罪の許しを得る方法であったり、痩せた体が死後復活しやすい(キリスト)と信じられていたり、また断食する事で悪魔からの影響してから身を守るなどの超能力を得る手段として用いられていました。
中世から近世にかけて、これらの理由により断食を行亡くなった方もいますがそもそも病気として扱われておらず、聖なる行為として崇められていた事実があります。
②奇跡の少女
16世紀から19世紀頃までのヨーロッパ各地において、長期間何も食べずに生き続け健康を維持してたため大衆から注目されていた女性がドイツにいました。
この少女はエクソシズムなのでは無いかと問題視されエクソシストが行われましたが、効果はなかったと。
また、12日間医師が観察したが、口腔からの飲食物の摂取も排泄も一切なく、ただ痩せているだけで健康であったそうです。
③断食芸人
19世紀のフランスで異様に痩せた男性が見せ物としてあちこちを回っていたそうです。167センチで32キロでその後は痩せすぎて亡くなったそうです。
現在でも片岡鶴太郎さんがヨガと1日一食のヴィーガンになりガリガリに痩せていますが、拒食症とは診断されていません。
また、日本のある宗教でも厳しい修行を行い断食に近い行為を行っており死者も出ているようですが、問題視されてはいません。
ですので、現在の拒食症患者の増加については、これから未来があるお若い女性にとってはとても大きな問題ですので、治療が必要だとは言えますが、昔ではその行為が宗教的な理由であれば尊い行為とみなされていたのです。
参考文献:切池信男著「摂食障害」医学書院2011年
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